「昨日の客はひどかったね。」と、私はストレガ・クーラーを注文した後で声を掛けた。
イタリア産の黄金色のストレガリキュールにグレープフルーツで、初夏の暑さには
清涼感たっぷりというロングカクテルだが、アルコール度は低くはない。
「ストレガというのは、外観に似合わず魔女という意味なんだそうですよ。」と、マスター。
「このストレガ自体、アルコール分は40%もあるものですから。」
「昨日のマスターの作り方は、帰ってから計算してみたら、合っていたよ。
つまり、最初のグラス容量X、移動量Yとすると、彼女のグラスには、容量Yの
ウオッカが入り、同量のYを戻すと、X・Y/(X+Y)のウオッカが残る。
一方、男性のグラスには、X・Y/(X+Y)のジュースが入ることになる。
考えてみれば単純な計算なんだけれど、なにか男性の割合が薄く感じてしまうのは、
これは錯覚というものかな?」
「錯覚といえば」と、マスターが案の定、新しい課題を示したのは、私がカクテルからウイスキー、
バーボン2杯としたたか酔い始めた頃だった。
マスター「私がいま興味を持っているのが確率の問題なんです。単純ですが考える価値のある
クイズです。」
このとき店は満席状態。カウンターに居た8人がこのクイズに挑戦することになったのだが。



マスター「まずは小手調べ。赤白カード問題です。」
「ここに3枚のカードがあります。
1枚目は、表が赤、裏も赤のカード。
2枚目は、表が白、裏も白のカード。
3枚目は、表が白、裏は赤のカード。
(実はどちらが表か裏かは関係ありません。片方がという意味です)
さて、私が箱の中から無作為に1枚のカードを出してテーブルに置いたところ、
見えている表は赤色でした。
このとき、この1枚のカードの裏面が赤である確立は何パーセントでしょうか?」

「あのね、マスター。片方が赤のカードは、赤と赤のカードか、赤と白のカードの組み合わせ
だけなんだよ。当然0.5、つまり50%でしょう。」と大学生の工藤くん。
「そんな単純なクイズをマスターが出すわけないじゃないの。」と、やはり常連のアキコさん。
「赤が出たといっても、これには赤白のカードの赤が出た場合と、赤赤の表の赤が出た場合と、
赤赤の裏の赤が出た場合の、全部で3通りの組み合わせがある。
だから、裏も赤である可能性は2/3だよ。」と、宮崎氏。
「これは確率の問題ではなく、常識の問題さ。可能性は、赤赤のカードか、それとも
赤白のカードかという二者択一の問題なんだ。1/2が正しいと思うよ。」と、長野氏。
「わかった。実際にコインかなにかで実験してみよう。」と私は提案した。
さて数回、10円玉、100円玉、50円玉を使って紙にその出目を書いていったのだが、
そのうち、出る回数が均一の場合という仮定で、紙と鉛筆さえあれば思考実験できることに
気が付いたのだが、さてその結果は?