オカルトとは異端のこと。
ちなみに、Cultとは礼拝、崇拝を意味し、Occultとは、秘術や
密教的なものを意味し、魔術や錬金術がこれにあたる。

 しかし、ここで問題にしたいのはその歴史的意味である。
オカルトの母と呼ばれた、エレナ・ブラバッキー(1831-1891)が
世界(インドから東洋、アフリカ、アメリカ)を旅して、その
探索の明細は不明のままだが、中世キリスト教、特に教会権威
が生んだ暗黒社会に対して、それ以前の、またはキリスト教圏外
の多神教世界を紹介するに及んで、神や宗教や人間の精神の歴史
が実に多様かつ奥深いものであることを知らしめたのだ。

 残念なことに、エレナ・ブラバッキーの著書の完全訳は和訳
されていない。今でも世界中でのベストセラーだというのに。
「ヴェールを脱いだイシス(1877)」
「シークレット・ドクトリン(1888)」

 「Helena Petrovna Blavatsky」は、名前の通りロシアの出身
だが、その著書は世界中で読まれることを希望して稚拙ながら
英語で書かれているという。
日本では東條真人が「シークレット・ドクトリンを読む」で
紹介しているのが希少な抜粋和訳。

 その内容は、例えばアトランテス人の身長は30mだったとか
信じ難い記述もあるにせよ、ミトラ教、ヒンドゥ教、チベット
仏教等を集体系し、欧州のキリスト教の世界以外、またはそれ
以前の世界の知識をまとめあげ紹介し、当時の知識人に多大な
影響を与えることになった。

 そもそもキリスト教会は、イスラム教も同じところがあるのだが
ギリシャ神話やローマ初期の多神教の世界を否定し、あまたの神を
ほとんど邪神、悪魔の類に貶めてしまった。
サタンですら、元は守護神の一人だったというのに。

 西暦紀元のイエス・キリスト、紀元前500年のブッダ、紀元後
のムハンドラ(モハメッド)、この辺から宗教世界、精神世界は
権威的なものに変身し、一神教の教義の元に人間の精神世界を実に
貧しいものに変えてしまった。

 勿論、キリストやブッダを否定する気は毛頭ない。
しかし例えば、そのどちらも自身の葬儀を拒否しているのに、その
後の教会や寺院は冠婚葬祭で社会に君臨したのである。

 近日、ベストセラーを記録した「ハリー・ポッター」、その後の
ベストセラー「ダ・ビンチ・コード」は、遅まきながら一神教という
名の単一世界観を修復しようという世相の表れとも言えるだろう。

 さてオカルトの意味するところは、こうした精神世界の歴史修正
だけでは無い。
現在の科学(ギリシャ時代の哲学)が求めている真理について、
どうしても解けない謎をオカルトは幾つもの答えを出していること
が重要なのだ。

 例えば現代人は時間という概念の元で生きている。
しかし冷静に考えれば、「時間は無い」のである。
物が変化したり、地球が一回の自転をすること、DNAが老化の
メカニズムを生命に組み込んでいることなどの現象を人は感知し
あたかも時間というものが「河の流れるが如く」過去から未来に
一方的に進んでいるように意識しているに過ぎないのに。

 エレン・ブラバッキーの「シークレット・ドクトリン」の冒頭は
「時間は無い」という記述から始まる。
その宇宙観の記述は、中世の暗黒時代、キリスト教会の愚昧な思想
に対するオカルト、異端の記述であったのである。

 さて話を元に戻して、オカルトの言葉の意味するところの神秘に
ついても述べておかなければならない。
「現代は科学の時代である」と言うことは出来るかもしてない。
なにしろ、数十万年の人類の歴史で僅か、この百年、二百年で科学
は加速度的な進歩をとげたのだから。
宇宙旅行やロボットは夢物語ではなくなり、我々は携帯電話や医療
科学の恩恵を受けて日常を生活するに至っている。
あと百年から五百年もすれば多分、人間は不死の技術を手に入れ、
光合成の実用化から食糧難の問題も解決するのだろう。
しかし一方で解決不可能な問題も残している。
重力の謎、量子力学上での素粒子の振る舞いの謎、そもそも光速度
が一定である理由など、アインシュタインの相対性理論から百年も
たっているので根本的な説明はされないままなのだ。
科学はもう一つ、別な方法で進歩をしなければならないと思うのは
私だけだろうか。

 催眠状態で患者を治したエドガー・ケーシー(1877-1945)の能力、
科学者から後に死後の世界へ行き来したスエーデンボルグ、戦前の
ポーランドからロシアへ脱出した20世紀最大の超能力者と言われた
ウルフ・G・メシング、数々の奇跡を行ったピオ神父、そのお告げを
バチカンに封印された「ファチマ第三の予言」のルチア、等々、
否定するには証拠が有り過ぎる、神秘という存在がある。

 我々は科学的なものは盲目的に信じ込むが、なぜ癌ですら病は気から
直るのか分らないし、アインシュタインは尊敬しても光速度や重力の
謎、宇宙がインフレーションで生まれた謎には目をつぶっている。
一方で、幾ら事実を知らされても神秘的であるものには懐疑的だ。
これには暗黒時代を生んだキリスト教会などの、歪んだ宗教のもたらした
弊害が現代の我々に強く影響しているのは間違い無い。
そしてもう一つ、科学は自動洗濯機のように我々に平等に恩恵をもたら
すが、神秘的な能力は平等に人に与えられるとは思えないところにも、
その理由があると思う。

 しかし私は、人間や歴史というものをもっと大局的に考えるべきだと
考える。遺伝子の利己的でありながら目的を持ったかのような振る舞い、
そもそも宇宙に生命が生じた理由、時間は「無い」のに物質の関係は
時間でしか表現できない理由。
 
 こうした答えを古代の人々は既にある程度は見出していたのかも知れない。
近代の宗教という社会的権力機構とは別に、元祖ヒンズー教やギリシャ
神話の中に、ある程度その答えがあるのかも知れない。
我々は異端と呼ばれ、現在はオカルトと言われている世界にもう少し
目を向けるべきではないだろうか。

by MIMI